霊性と情熱のあいだぐらい

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<<   作成日時 : 2011/03/25 20:51   >>

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前回の続き。
地震の翌日の朝6時。昨日の火災はまだ消えていないのか、複数箇所で煙が見える。
国道を曲がるとすぐに水没地区に入る。水位は多少下がったものの、民家の一階が水没しているところから見て、おそらく150〜180センチくらいはありそうだ。
市内に入るのはボートが必要だ。
ソフトバンクの携帯は「圏外」と表示されたまま。2日目の時点でソフトバンクとドコモの携帯は完全に不通。au同士が辛うじてつながる状態になっていた。
携帯のつながるエリアはないかと車でウロウロと動き回った。
すると日本赤十字病院の前に来るとアンテナが一本立った。祈るような思いで妻に電話。・・・・つながった!
「無事か?」
「うん、大丈夫。でも、ここ、食料がないよ」
「え・・・あ、それは困ったな」
「水もまだ引いてないよ。胸の高さぐらいはありそう」
「そうか・・・。携帯のバッテリーは大丈夫かな?どこかで充電は・・・」
ブチッ!
通話が切れた。これ以後、ソフトバンクの携帯は一切どこにもつながらなくなった。

もう一度、北上運河に向かう。
石巻の旧市街(合併前から石巻だった地域)は全域が水に浸かっているようだ。海から4キロも離れているこの地区でこの深さなんだから、港付近の住宅地はいったいどうなっているのやら・・・・。

旧市街に自宅や会社や知人の家がある人々は運河周辺に集まり、どうにか中の人たちと連絡をとる手段はないかと思案していた。東北の沿岸地区は全域でこの状態なのだろうから、警察や消防が助けに来るのには時間がかかるだろう。水も食料もないのに孤立した人々はいったい何日持ちこたえられるのだろうか?

2日目の午後4時。
水位はほとんど下がっていない。
自衛隊のヘリコプターが多数飛んでいるが、救助作業を始めている様子はない。固定電話も携帯電話もどこにもつながらない。
焦る。
しかし突破口を見つけた。
電車の線路だ。線路は道路よりも1メートルほど高くなっている。石巻市役所は駅前にあるから、線路をたどっていけばたどり着けるはずだ。時刻は夕方。いま行っても明るいうちに戻っては来れないだろう。
妻よ、もう一晩だけ我慢しろよ。明日の朝になったら助けに行くぞ。
遠くに市役所の明かりが見える。自家発電ができるのか。薬の残量はもうないだろうな。

3日目の朝。
夜が明けないうちから準備を始めた。地震以来、なんの店も開いてない。自宅にあるもので何とかしなければ。
線路をたどっていっても、途中で地面が陥没しているかもしれない。ライフジャケットが欲しい。
家の中を探したら、直径1メートルほどのフィットネスボールを見つけた。これにつかまっていけば浮き輪の代わりになるかもしれない。
朝6時。再び水没地区に向かう。
考えることはみんな同じだったらしい。線路の上を歩いて中心街に向かう人が何人もいる。みんな家族の安否確認がしたいのだろう。歩いている人の姿を見る限り、水の深さは胸ぐらいか。よし、俺も行くか。
水の中に足を一歩踏み入れたら周りの人から止められた。
「やめなさい。何の装備もなしに行ったら寒さで足が動かなくなって溺れるよ」
「え?そうですか?でもみんな歩いてますよ?」
「いま歩いている人はみんな完全装備ですよ。ウェットスーツとか、釣り用の胴長(胸まである長靴)を着てましたよ。」
「そんなのいま手に入るんですか?」
「昨日までだったら上州屋(釣具店)で売ってたらしいけど・・・」
なるほど、確かにそれなら確実だ。この泥水の中を無事に往復できるとも思えないしな。
すぐに車で上州屋に向かう。店は閉まっていた。窓を割って入ろうかとも思ったが、中に胴長が残っている可能性は低いだろう。
知り合いの釣り好きを回ったほうがいい。
3時間あちこちを駆けずり回って、ようやく胴長を持っている人を見つけ出した。事情を話し、貸してくれるように頼む。
「市役所に行くんですか?水が深くて無理ですよ。私も昨日から何度も見に行ってるんですから」
「いいえ、線路の上だったら可能です。実際に線路をわたって市内に入っている人たちもいます。」
どうやらこの釣り吉も、奥さんの実家が水没地区にあるらしい。昨日からどうにか連絡を取ろうとして苦労しているとのこと。
「生きて戻れたらすぐに返しに来ますので」
「・・・・そうですか。じゃ、持って行ってください。うまく行ったら私も人命救助に使いたいので返してくださいね」
「分かりました、必ず」
どうにか胴長を一着借りることができた(彼は3着持っていたが彼も使うかもしれないと言うので遠慮した)。
帰り道は妻にこれを着せればいい。片道くらいだったら生身でも大丈夫だろう。

この時点で、石巻の雄勝や渡波地区で死体があちこちに浮いていると言う話は聞いていた。私が溺れても誰も助けには来ないだろう。本当に死ぬかもしれない・・・ちょっとだけ思い始めていた。
私は重度の花粉症なのだが、地震以来鼻水は出ていない。死の危険を察知して、どうやら体の免疫機能が正常化したような感じだ。
自衛隊のハマーが10台ほど連なり、水没地区の手前まで来たが、なぜかUターンして戻っていってしまった。
人々から「なんだよ、助けに来たんじゃないのかよ!」「訓練じゃねーんだぞ、バカヤロウ!」などの怒号が飛んだ。
携帯も通じないし、一度に10万人もの自衛隊が被災地に入ったのだから、無線などが大混乱しているのは容易に想像できる。

指揮命令系統がズタズタなのだ。自衛隊の救助を待ってる余裕はない。
決意を固めて胴長を着た。大丈夫。目標の建物は見えてる。必ず成功する。自分に暗示をかけて水没している線路の上を歩き始めた。

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