霊性と情熱のあいだぐらい

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<<   作成日時 : 2011/03/27 16:35   >>

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消防活動や避難所の炊き出しなどのため定期的な更新はできませんが、被災地で何があったのかを伝えるためにブログを書き続けます。
それでは前回の続きから。

地震から3日目。3月13日の午前11時。
ようやく胴長を手に入れた私は水没地の手前に到着した。道路は大渋滞しており、信号もないのでかなり強引に交差点を走らなければならなかった。私も車をぶつけるのを覚悟で突っ込んだ。
すでに石巻上空には無数のヘリコプターが飛んでいた。何機いるんだから数え切れない。自衛隊以外にも県警や消防のヘリもいるのだろうか。かなり低空飛行しており、物資の投下が始まっているようだった。
だが、何千人か何万人か知らないが、水没地帯に取り残された人を全員救出するのは相当な時間がかかるだろう。食料も薬もない状態で、妻を市役所に置いておく訳には行かなかった。

深呼吸してから水没している石巻線の線路に踏み出した。
泥水で足元が見えない。足でレールを探りながら進んだ。線路の両脇はちょっとした水路(ドブ)になっており、水深は恐らく2メール以上はあるだろう。足を踏み外して、胴長に水が入りでもしたら浮き上がっては来れないだろう。
50メートルほど歩いたところで周りを見渡す。すげー光景だ。見慣れた街がすべて水につかり、とんでもない数の車も沈んでいる。ワゴン車の屋根がちょっとだけ見える程度だ。
石巻の人間は、地震があったら日和山に避難するように訓練されている。しかし、まさか津波が日和山を回りこんで裏側の中心街にまで到達するなんて誰も想像すらしていなかっただろう。海からかなり離れている中心部でさえ、この有様なのだから、もっと海に近い門脇や、南浜、渡波などの地区は地獄だろうな・・・・。
仙台の荒浜では数百人の遺体が浮いているとラジオで言っていたし、いったいどれだけの死者が出てることやら・・・。
地元の航空自衛隊松島基地が津波で壊滅したのはニュースで知っていた。多賀城駐屯地もどうなっていることやら・・・・。地元の地理に詳しい部隊が全滅している以上、救助にはさらに時間がかかるだろう。

あー、考えても仕方ねぇ。行こう。
さらに100メートル進んだところで、線路脇の民家の2階から女性が声をかけてきた。
「すいませーん、どちらからきたんですかー?」
民家までは15メートルほどしかないが、線路下は水が深いので歩いていくのは不可能。
「えーと、国道の方から歩いてきましたー」
「え?あっちは水がないんですか?」
「はい、45号線のところまで行けば水がありません。蛇田のあたりは大丈夫です。」
「テレビもつかないし、携帯のバッテリーもないので何にも情報がないんですよー。救助隊はいつ来ますかねー?」
「・・・・青森から茨城まで海岸線は全部ここと同じみたいですよー。範囲が広すぎて救助が来るのは時間がかかると思いますー」
「はぁぁ?青森から茨城・・・・?」
女性は心底驚いているようだった。たぶん、津波に遭ったのは石巻周辺だけだと思っていたのだろう。
「線路のところまで泳いでくれば、歩いて避難所までいけますよー」
「・・・ウチは子供がいるのでやめておきますー。ところで水か食料持ってませんかー?」
地震直後から断水と停電で、私も水は持っていなかった。自動販売機も使えない。正直、私自身も喉がからからだった。
「すみません。持ってません」
仮に持っていたとしても、15メートル先の2階の窓までペットボトルを正確に投げる自信はない。
「そうですか・・・。で、どこにいくんですか?」
「市役所です。妻が避難しているので迎えに行きます。」
「ああ、そうですか、がんばってください」
周りを見渡すと、周囲の民家やアパートの2階に、本当にたくさんの人が避難していた。何度も言うが、ここまで津波が来るなんて誰も予想していなかったのだ。気がついたときには1階が浸水しており、2階に逃げたが、そのまま出られないなった・・・・というわけだ。誰もが不安そうに窓から自衛隊のヘリを眺めている。残念ながら、今の私には何もできない。
さらに前へ進む。
線路の向こうから、50代くらいのオッサンが歩いてきた。背中にリュックを背負っており、自宅から貴重品でも持ち出して来たのだろう。どこで手に入れたのか、きっちり胴長を装備している。
「兄ちゃん、どこに行くんだ。戻れ。さっき俺が行った時より水が深くなってるぞ、やめろやめろ」
「ああ、そうですか」
無視して前へ進む。オッサンがが後ろでなにやら怒鳴っていたが意識的に聞かないようにした。今さら止められるか!
しかし、オッサンが言ったように、その辺から急に水が深くなって胸の辺りまで達した。しかも、ドラム缶やら、木製の電柱まで流れてくる。
「そこ、気をつけてくださいねー!」
線路脇の民家の老夫婦が声をかけてくれた。
「信号機のあたりは深くなってますから、慎重に歩いてくださいねー」
「ありがとうございまーす!」
確かに、(列車用の)信号機のそばは陥没して穴が開いていた。私よりも先に歩いていった誰かがここでハマッたのだろう。その人はどうなったのやら・・・・。慎重にレールの上を歩く。

急に水が浅くなり、踏切まで到達したところで駅前の道路に上がる。水深は50センチ程度。
そこで中年男性と、その息子らしき人が近寄ってきた。
「どこからきたんですか?」
「えーと、線路を歩いてきました。」
「歩いて脱出できるんでしょうか?」
「はい、線路の上ならせいぜい胸ぐらいまでですから、がんばって500メートルほど歩けば・・・」
「あっちは水がないんですね?どこからないんですか?」
相手も必死だ。とにかく詳しい情報が欲しいらしい。
「あそこに大きなアンテナが見えますよね?あの辺から水がありません。あそこまで歩ければ助かります。」
しかし、この親子は生身だ。胴長を着ている私とは条件が違う。足にゴミ袋を巻いて長靴代わりにしているが、脱出にはその長さでは足りないだろう。
「水・・・・冷たいですよ。」
「ええ、でも、食料も何もないので・・・・行きます」
「信号のところに穴があるから気をつけてください。それ以外のところは、枕木のところを歩けますから」
「ありがとう」
親子は、今私が来た道を逆に歩き始めた。どうか無事で。私も帰りは生身で行きますよ。

親子を見送ったところで私も再び歩き始めた。市役所まであと100メートル。

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